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第二章 再会は最悪で最低12

last update Last Updated: 2025-01-16 17:48:12

紫藤大樹side

沖縄の撮影が終わり飛行機で帰る最中、目を閉じていたが、美羽のことばかり考えている。

――十年ぶり……か。

まさか、再会できるなんて思わなかった。予告なしに会った時、俺は自分を見失いそうになった。

ずっと、美羽に会えなくなってから怒りしか残ってないと思っていたのに、俺は愕然とした。

撮影中も仕事に集中できなくて、どうにか二人きりになりたいって思っていたんだから。

バカだよな。何年も同じ女を好きでいるなんて。自分がこんなに一途だとは知らなかった。

兄貴が亡くなってからも、俺はあの家に帰ると兄貴がいるような気がしてたまに行ったりしていた。

今考えたら明らかに不審者なんだけどね。

俺は、とにかく孤独だった。親と兄の死を間近に見て、生きていることの有り難みを知ったと同時に、死への恐怖心も芽生えていた。

いつも、どこか暖かい場所を求めていたのかもしれない。

美羽にはじめて会った時、なんとなくフィーリングは合う気がしたけど、まさか恋愛感情が芽生えるなんて思わなかった。

恋愛なんてできないと思っていたのに、気がつくといつも美羽の顔が浮かぶようになって、辛いレッスンがあった後でも美羽に会えると思うと頑張れたんだ。

――兄貴からのプレゼントだと思った。

孤独すぎる俺に、与えてくれた兄貴からのプレゼント。

きっと、俺は美羽に出会うために生きているのだとさえ感じられて、愛しくてたまらなかった。

美羽は言葉でちゃんと伝えてやらなきゃわからないタイプだから、気持ちが通じ合うまで時間がかかった。

はじめて美羽を抱いた日。

俺は余裕が無くて、ついついソファーでしてしまったんだ。

目を閉じると鮮明に思い出すことができる。

もう一度、真っ白な肌の美羽に触れたい――……。
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    美羽side結婚パーティーを無事に終えることができ、私は心から安心していた。 私と大くんが夫婦になったということをたくさんの人が祝ってくれたのが、嬉しくて ありがたくてたまらなかった。 しかし私が大くんと結婚したことで、傷ついてしまったファンがいるのも事実だ。 アイドルとしては、芸能生活を続けていくのはかなり厳しいだろう。 覚悟はしていたのに本当に私がそばにいていいのかと悩んでしまう時もある。 そんな時は大きくなってきたお腹を撫でて、私と大くんが選んだ道は間違っていないと思うようにしていた。自分で自分を肯定しなければ気持ちがおかしくなってしまいそうになる。 あまり落ち込まないようにしよう。 大くんは、仕事が立て込んでいて帰ってくるのが遅いみたい。 食事は、軽めのものを用意しておいた。 入浴も終えてソファーで休んでいたが時計は二十三時。 いつも帰りが遅いので平気。 私と大くんは再会するまでの間、会えていない期間があった。 これに比べると今は必ず帰ってくるので、幸せな状況だと感で胸がいっぱいだ。 今日は産婦人科に行ってきて赤ちゃんの性別がはっきりわかったので、伝えようと思っている。手作りのケーキを作ってフルーツの中身で伝えるというささやかなイベントをしようと思った。でも仕事で疲れているところにそんなことをしたら迷惑かな。 でも大事なことなので特別な時間にしたい。

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    「そんな簡単な問題じゃないと思う。もっと冷静になって考えなさい」強い口調で言われたので思わず大澤社長を睨んでしまう。すると大澤社長は呆れたように大きなため息をついた。「あなたの気の強さはわかるけど、落ち着いて考えないといけないのよ。大人なんだからね」「ああ、わかってる」「芸能人だから考えがずれているって思われたら、困るでしょう」本当に困った子というような感じでアルコールを流し込んでいる。社長にとっては俺たちはずっと子供のような存在なのかもしれない。大事に思ってくれているからこそ厳しい言葉をかけてくれているのだろう。「……メンバーで話し合いをしたいと思う。その上でどうするか決めていきたい」大澤社長は俺の真剣な言葉を聞いてじっと瞳を見つめてくる。「わかったわ。メンバーで話し合いをするまでに自分がこれからどうしていきたいか、自分に何ができるのかを考えてきなさい」「……ありがとうございます」俺はペコッと頭を下げた。「解散するにしても、ファンの皆さんが納得する形にしなければいけないのよ。ファンのおかげであなたたちはご飯を食べてこられたのだから。感謝を忘れてはいけないの」大澤社長の言葉が身にしみていた。彼女の言う通りだ。ファンがいたからこそ俺たちは成長しこうして食べていくことができた。音楽を聞いてくれている人たちに元気を届けたいと思いながら過ごしていたけれど、逆に俺たちが勇気や希望をもらえたりしてありがたい存在だった。そのファンたちを怒らせてしまう結果になるかもしれない。それでも俺は自分の人生を愛する人と過ごしていきたいと考えた。俺達COLORは、変わる時なのかもしれない……。

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